実践編2

オープン雇用において、ご自身の障がいについての説明は、最も重要なポイントです。

ご自身の障がいや特性、配慮事項を伝えることで、企業に悪い点としてとらえられ、評価がマイナスとなってしまうのではないかと考えてしまいがちです。
躊躇して、「何でも一人でできるので、配慮事項はありません」と応募書類に記載をしてしまう方もいるでしょう。

ですが実は、このような記載はオープン雇用を目指す場合に、まったくの逆効果となります。

長期で就労をする事を前提とした場合、企業が知りたいのは、本人の障がい特性によって苦手なこと、不便なことが何か、その対処方法を本人が持っているのか、企業として配慮すべきことはどのようなことか、といった、共に働くための要件です。

実践編2では、障がいについての効果的な伝え方を考えていきましょう。

 

障がいについての説明資料

ご自身の障がいや配慮事項については、履歴書などにダイジェストで記載をするより、独立した1枚の書面を作成しておきます。

診断名だけでは、症状や特性が明確でないだけでなく、苦手なことや不便感も個々により違いがあるため相互理解に至りません。

視覚障がいの方でも、視野の欠損箇所が人それぞれであったり、症状の進行がある方・ない方などの違いがあります。
下肢障がいと記載をされていても、その程度もさまざまです。

また、精神・発達障がいは、同じ診断名でも症状や特性は千差万別です。
例えば、うつ病と記載をしても、どんな要因がストレスになるかは人によって異なります。

正しくご自身の症状や特性、配慮事項をつたえるには、ある程度の文字数が必要になるため、“私の障がいと配慮事項について”といったタイトルでドキュメントを作成することをおすすめします。

 

障がいについての書き方

まずはご自身の病名・診断名を記載し、ご自身の障がいについて記述をします。

 

障がいが発症、またはご自身で気づいた時期や要因などをわかりやすく記載しましょう。


長時間の残業や休日出勤などが続き、不眠の症状があらわれ仕事に集中ができなくなりました。
そのためミスが多発し、上司から何度も注意をうけ、仕事に対する自信がなくなり、無気力状態となったため、診療内科を訪れ〇〇の診断を受けました。 

 

 

どのような治療や訓練、セルフケアで、就労可能な状態に復帰したかなど、経緯や対処を記載しましょう。


発症の診断から3か月程度の自宅療養を行い、その間は週に1回の通院と毎日2回の服薬の治療をしていました。
通院と服薬の結果、気分の落ち込みが改善されました。そこで睡眠時間を毎日一定に保ち(11時就寝6時起床の7時間睡眠)、食事も3食決められた時間にとり、毎日適度な運動を行うことにより生活リズムが安定をしたため、不安を感じることがなくなり、支障なく日常生活を行えるようになりました。

 

できれば職場をイメージした、苦手なことや不便と感じることを記載しましょう。


・下肢に障がいがあるため、頻繁に立ったり座ったりの動作は苦手です。
・残業が継続をすると、疲労が蓄積され不安感があらわれます。
・一度に複数の業務に指示があると優先順位をつけることができずに混乱します。
・低気圧が近づくと体調に影響があり、頭痛がおきます。
・季節の変わり目(特に寒くなる時期)には気持ちがふさぎがちになります。
・業務に没頭すると過集中になることがあります。

 

ご自身の苦手感や不便感、体調の変化や気持ちの波がある場合は、その対処法(セルフケア)を記載するようにしましょう。


季節の変わり目(特に寒くなる時期)には気持ちがふさぎがちになりやすいため、睡眠時間を1時間ほど多くして体調の管理に気をつけています。
また複数の業務指示があった場合には、自分なりに順番をつけますので、上司に相談をして確認します。

 

配慮事項の書き方

配慮事項は企業に何らかの対応を求めることになります。
そのためなるべく具体的に記載することが重要です。特に時間やタイミング、回数に関わる配慮事項は、正確に伝える必要があります。

例えば、過集中傾向のある方の場合、“過集中の時には休憩の配慮をお願いします”との記載では、企業から見ると曖昧で何をするべきか理解が難しいかもしれません。

・過集中の時とは、誰かがずっと状態を確認していなければならないのだろうか。
・休憩といっても医務室が無く、横になって休むことはできないのだが。
・1,2時間も休憩されてしまうと業務の進捗に影響がでてしまいそうだ。

少しオーバーかもしれませんが、このような意味合いに取られてしまう可能性もあります。
そこで、例えば以下のように記載することをおすすめします。


過集中の時には自分から申告しますので、5分ほど離席の許可をお願いします。ストレッチや、飲み物を飲んで気分を落ち着かせます。
過集中を防ぐため、1時間に5分ほどの休憩の許可をお願いします。いったん離席をして深呼吸やコーヒー飲んで気持ちの切換えをします。
また、通院が主治医の状況などで平日の場合は、月に1回は通院のため午前(午後)休の配慮をおねがいします。などと記載をしましょう。

 

おわりに

誰でも様々な環境で生活をしています。小さな子供がいる家庭や、介護を必要している方がいれば、働き方の配慮があることが望ましいでしょう。これが育児休暇や介護休暇です。

企業は労働者の生活の状況を把握して、無理なく働けるようにする合理的配慮を行うことが義務付けられています。

障がいのある方についても同様です。特にオープン雇用では苦手なことや不便なことに配慮することを前提としていますから、配慮事項を伝え、ご自身が無理な我慢をすることなく就労できる状態が理想です。

特に内部障がいや精神・発達障がいのような“見えない障がい”の場合は、他者に不便感、苦手感がわかりにくいため、本人に苦痛となってしまう業務や業務のやり方で指示をしてしまうことも想定されます。
1回、2回はなんとかなるかもしれませんが、長期にわたる業務となった場合には、ご自身が日々我慢を強いることになり、体調悪化の要因となることもあります。

短期で退職したケースには、ご自身の障がいや配慮事項が伝えられていないことも多いようです。

ご自身の障がいについて、症状や特性、セルフケア方法、配慮事項など、しっかり伝えることで相互理解を深め、長期の就労が可能となります。
定着・活躍できる就労を目指し、第三者に伝わる書面作成を心がけましょう。

 

執筆:株式会社セルム NANAIROチーム