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障がい者が話す「私の仕事探し」VOL.1

頭よりも体を使う仕事、スポーツ関連の仕事に就きたい

 5月初旬には、WHO(世界保健機関)が新型コロナウイルス感染症に関する「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」宣言の終了を発表した。アフター・コロナの社会で、Sさんはどのような仕事に就きたいと考えているのか?

「子どもの頃から勉強が苦手で、頭を使うような仕事は不向きなのですが、運動するのはずっと好きで、中学時代にはサッカー部、高校時代には水泳部に入って頑張っていました。だから、体力には自信があります。頭よりも体を使う仕事、できればスポーツ関連の会社に就職したいですね」

 一方で、働くこと自体や、自分を迎え入れてくれる職場に対し、少なからず不安も抱いているようだ。

「僕は物覚えが悪いので、パン屋さんのアルバイトでもよく叱られていました。メンタル面が強くないことは自覚していますが、とにかく怒鳴られるのが苦手で、問い詰められると、どんどん気持ちが萎縮してしまいます。その挙げ句、仕事自体が嫌になりかねないので、厳しく指導する人が上司になることには不安を感じてしまいます」


 統合失調症に罹患(りかん)する原因はまだ特定されていないが、ストレスが影響しているとも考えられている。生来の素因(心が繊細でストレス耐性が低い)、社会的な要因(何らかのストレスや環境の変化)の相互作用によって発症するとの仮説もある。その一方で、約100人に1人が罹患するとも言われており、多くの人がそのリスクを背負いながら日々の生活を送っている。パワハラの範疇ではなかったとしても、もはや「叱って育てる」という指導は時代錯誤だ。Sさんが職場の上司に求めているのも、脇に寄り添って並走するコーチングのような導きだろう。

 
Sさんの心中で入り乱れている期待と不安とは?
 

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