障がい者が話す「私の仕事探し」VOL.1

2023年3月の日曜日、大手町のあるホールで開かれた「障がい者のための就職・転職フェア SMILE」には、身体、精神の障がいがある求職者300人近くが訪れた。主催するのは朝日新聞グループの株式会社朝日エージェンシー。このイベントは首都圏最大級の障がい者向け就職・転職フェアだ。来場した人たちはどのような思いで仕事探しをしているのか、現場で声を聞いた。


統合失調症はほぼ落ち着いたが、やはり対人関係は苦手なので、
適度な距離感を保ってもらいたい (20代男性、精神障がい)


昔から人間関係で苦労し、3年前に統合失調症を発症

 学生時代から人間関係が苦手で辛い思いをしてきたというSさん(20代男性、精神障がい)は、3年程前に統合失調症を患った。

 一般的に統合失調症の症状は、陽性症状(幻覚、妄想、精神的および行動的な興奮・高揚、昏迷など)、陰性症状(抑うつ、無気力、ひきこもり、倦怠感、感情の平板化など)、認知機能障害(記憶力の低下、注意力・集中力の低下判断力の低下)の3つに大別される。ただ、いずれの症状の出方には個人差があるようだ。

 病気の経過は不眠に悩まされたり、音に過敏になったり、焦燥感にかられたりといった「前兆期」がしばらく続いた後、不安感や緊張感が極度に高まる「急性期」に入っていく。

 この局面で心身ともに疲れ切り、眠気や倦怠感に襲われ、無気力になっていく「消耗期」が訪れる。 治療薬を飲んだり休息したりしてこの時期を抜け出せば、少しずつ元気を取り戻し、精神的にも安定してくる「回復期」に入る。Sさんはこの「回復期」を経た後、社会に出て働きたいと考えるようになった。

「病気だったこともあって、本格的に働いた経験はありません。ほぼ落ち着いてきてからはパン屋さんでアルバイトとして、接客業務などを任されていました。 でも、新型コロナウイルス感染症が流行すると、接客業は感染リスクが高いから心配だと親が言い出し、僕はまだ続けたかったのですが、結局は辞めざるをえない状況になってしまいました」

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