障がい者が話す「私の仕事探し」VOL.9

今春、大手町で開催された「障がい者のための就職・転職フェアSMILE」。訪れたMさん(30代男性、発達障がい)は、参加している企業は、障がいに対する理解が深く、制度も配慮も行き届いているという感触を得た。


中古車業界にクローズ就労したものの
周囲の理解が得られず短期間で離職。
次はオープン就労で長く働きたい
(30代男性、発達障がい)


 好きな自動車を扱う仕事なら長く 働けると考え中古車販売会社に就職

 Mさんは20代で測量設計会社に入社し2年ほど働き、健康器具メーカー、自動車解体・部品販売会社などを経て、30歳で中古車販売店に就職した。

 この会社を選んだのは、そろそろ転職が難しくなる年齢を迎えたことを期に、「得意」や「好き」を生かす仕事に就いて長く働きたいと考えたからだ。Mさんの「得意」や「好き」に当てはまるのは自動車。

「その会社は私が乗っている外車を主に扱う中古車販売店でした。自ら営業を志望し、クローズで就労していました」

 クローズ就労というのは会社に障がいを伝えず、いわゆる一般採用枠に応募して就労すること。業界や職種を選びやすく、賃金も障がい者雇用枠に比べ高い傾向にある。その代わり、上司や同僚は障がいを知らないのだから障がいに起因するミスを犯しても配慮をされないし、ミスが度重なれば仕事ができない人材と見なされてリカバリーも期待できなくなることもある。

 Mさんのケースは、後者のデメリットが表に出てしまった。どんなに注意深く行動をしても発達障がいによるミスを防ぐことができず、上司からたびたび𠮟責(しっせき)された。最初はサポートしてくれた同僚からも突き放された。しまいには「あなたはもういらないよ」というハラスメントに抵触する言葉を投げかけられることもあった。

「発達障がいをカバーして働くことは難しいと感じました。でも、ここまでこじれた状況で発達障がいを打ち明けても、この会社ではただの言い訳と受け取られてしまう」

 そう結論したMさんは、10カ月間勤めた中古車販売店に辞表を提出した。


発達障がいと向き合う覚悟を決めた

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