障がい者が話す「私の仕事探し」VOL.8

「障がい者のための就職・転職フェアSMILE」がこの春、大手町の会場で開催された。発達障がいと診断されたNさん(20代男性・発達障がい)、Sさん(30代女性・発達障がい)は診断されたことで自分の特徴を理解し、自分に合った仕事探しを始めた。


自分でも気づきにくい「発達障がい」。
医師の診断をきっかけに長く安心して働ける職場探しを探したい
(20代男性・発達障がい)


発達障がいの診断を受けて 自分の能力を生かせる職場へ

 飲食業やサービス業で働いてきたNさん(20代男性・発達障害)は、1年ほど前に発達障がいと診断された。それまでNさんは、複数の仕事を次々と処理していくマルチタスクが苦手で「同僚にはできることが、自分にはなぜできないのだろう」と悩んでいた。

発達障がいと診断されたことはショックではあったが、仕事で悩んでいたことの原因が分かり、「スッキリ」した面もあったという。

 これまでNさんが働いてきた飲食業やサービス業では、接客を担当することが多かったため、臨機応変な対応が必要だ。新たに処理しなければいけないことが次々と発生するため、マルチタスク能力が重要となる。

 しかし発達障がいのある人は、複数の指示を同時に受けると、前に受けた指示を忘れてしまうこともあり、ミスが起きやすくなってしまう。

 Nさんも同じで、仕事中に上司から別の指示を受けると、忘れてしまい「なぜ頼んだ仕事をしていないんだ」と叱責されることも多かった。あるいは、使った道具を片付けずに放置してしまい、同僚に迷惑をかけることも多かった。

 そのため、一つの職場で長く勤めることができず、職場を転々としてきた。

「叱られるのもつらかったのですが、みんなにはできていることが自分にはできなくて、周囲に迷惑をかけていると思うと、申し訳ない気持ちがいっぱいでしたね」(Nさん)

 そんな中で医師から発達障がいとの診断を受けて、「飲食業やサービス業は向いていなかったのだ」と理解できた。これまでの仕事は自宅が近いなどの理由でたまたま選んだだけだったので、飲食業やサービス業にこだわりがあったわけではない。

「他の仕事であれば、『自分の能力を生かせるかもしれない』と考えたら希望を持つことができました」(Nさん)

 Nさん自身も発達障がいにどんな仕事が向くのかを見極めたいとの思いもあったので、就労移行支援事業所へ通うことにした。


就労移行支援事業所で情報収集を始める

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