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障がい者が話す「私の仕事探し」VOL.12

今度こそ長く働きたいから、 給与よりもやりがいを重視する

 Nさんにとっては、体調を崩して前職を辞めたことが大きな悔いとなっている様子だ。今回の転職活動についても、同じようなことを繰り返したくないとの強い思いで臨んでいる。

「私は時折、疲れやすくなることがありますし、思考がうつになることがあります。だから、統合失調症のそういった症状をきちんと理解していただける職場で働きたいと思って、今回の就活フェアに参加しました」

 統合失調症に苦しむ人と健常な人では、疲れに対する感覚にも少なからぬ違いが生じうる。意外と多くの人たちの間では、いまだにその認識が低いのではないだろうか? 

 一方、給与の水準をはじめとする待遇面に関しては、特にこだわっていないという。

「収入はさほど気にしておらず、それよりも重視しているのは、長く働き続けられる職場であるかどうかというポイントです。雇用する側としても、障がい者の雇用率を一定水準以上に保つことが義務づけられているわけですから、長く働き続けてくれる人を歓迎しているはずです。私自身も、今度こそ末永く働き続けたいと思っています」

 また、給与面よりも仕事の内容にモチベーションを感じることが大切だとNさんは考えている。どういったことに頑張れば、どのようなステップアップの機会が待っているという希望を見出せる職場を求めている。

 もう一つ、Nさんが転職先選びの重要な条件に掲げているのが勤務地だ。

「先述したように、疲れやすくなる時期が不定期に訪れるので、通勤だけで参ってしまうと仕事に支障が生じかねません。自宅からの所要時間とともに電車の乗り継ぎ面なども踏まえて、通勤しやすそうな4社をあらかじめ絞り込んできました」

 概して、統合失調症をもつ人たちがセンシティブであることにも留意してほしいという。

「頭ごなしに叱りつけられると萎縮してしまいがちなので、励ましのような言葉で導いていただけるほうが円滑な改善に結びつくと思います」

 叱咤よりも激励。それは、けっしてパワハラが許されぬ今の世の中においては、すべての上司に求められることだろう。


10月22日に大手町三井ホールで開催された「障がい者のための就職・転職フェア SMILE」。26社が出展した。企業のブースを訪ねたら、「障がいのため困難なこと」をありのままに伝え、「こんな配慮があれば会社に貢献できる」、「就職後はこんな風に成長していきたい」といったポジティブなアピールをすることで好印象を与えることが大切だ。

(取材・文/向山勇)



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