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障がい者が話す「私の仕事探し」VOL.7

症例の少ない難病で理解されずらく 障害者手帳も発行してもらえない

 脳髄液減少症とは、交通事故やスポーツでの怪我、落下事故などによって頭部や全身に強い衝撃が加わって脳脊髄液が漏れ出したことが原因で発症する疾患だ。脳脊髄液が減った結果、頭痛や悪心、めまい、耳鳴りなどといったさまざまな症状が現れる。

 外傷が癒えた後も症状が続くことから、周りの理解がなかなか得られず、本人は精神的にも苦しめられがちだという。ただでさえ、他人とのコミュニケーションに困りがちであるうえ、「本当に具合が悪いの?」といった怪訝な目で見られてしまうことがEさんの心を傷つけた。

 この疾患だとすぐに判明しなかったことも、大きな痛手となった。脳髄液減少症の症状を自覚してから1カ月以内に適切な処置・治療を行えば、自然治癒するケースもあるというが、診断が遅れた場合には脳脊髄液が漏れ続けてしまう恐れが出てくるのだ。

「しかも、脳髄液減少症は症例が少ないこともあって、障害者手帳を発行してもらえませんでした。だから、治療でどうにか日常生活を過ごせる状態まで改善したものの、働くというステップまではなかなかたどり着きませんでした」

 残念ながら脳髄液減少症は国指定の難病ではなく、国内にはその専門医がまだ少ない。障害年金の受給を申請する際にも、「初診日認定要件」の認定が難しいなどといったハードルがあるという。

 だが、それでもEさんは前に進むことを諦めなかった。就労移行支援事業所の存在を知り、そこに通って何らかの技能を身に着けて就職先を見つけようと考えた。そして、住み慣れた街を離れて上京。2019年のことだった。

 
またしても待ち構えていた苦難とは?
 

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